人はなぜ苦しむのか。
その苦しみはどこから生まれ、どこへ向かうのか。
本研究所が探究する「形而上心理学」は、この根源的な問いから出発する。人間の経験は、単なる思考や感情の問題ではない。身体に生じる微細な変化が、意味として解釈され、行動となり、やがて世界観を形成する。そして、最終的には自由あるいは束縛へと至る。その連続的なプロセス全体を、一つの統一的構造として捉える試みである。
本理論では、人間の経験を九つの階層からなる動的システムとして理解する。自律神経レベルの反応、感覚と情動、意味づけ、信念(思い込み)、行動選択、社会的相互作用、人生観、存在理解、そして解放の次元へ。これらは断絶した段階ではなく、常に相互に影響し合いながら、人の生を形づくる。
従来の心理学は、しばしば一つの層に焦点を当ててきた。思考を変える、感情を調整する、行動を修正する。しかし本研究所は問う。もし問題がより深い層、あるいはより根源的な次元にあるとすれば、介入の順序そのものを誤ってはいないだろうか。
形而上心理学は、心理療法・哲学・神経科学・実存的洞察を架橋し、「どの層で、何が起きているのか」を見極めるための地図を提供する。そこでは、努力や意志による自己修正だけでなく、理解・再解釈・非同一化を通じた変容が中心的役割を果たす。
本研究所は、この九層構造を通して、人間の苦悩を単なる欠陥や失敗としてではなく、構造的に理解可能な現象として扱う。そして同時に、苦しみからの解放が偶然や信仰に委ねられるものではなく、理解可能なプロセスであることを示す。
ここに提示するのは、答えではない。
問い直すための確かな枠組みである。
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