自律型人材育成の重要課題


 自律型人材育成の重要課題 

 

by 高杉尚孝(たかすぎひさたか)

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今や自律型人材の必要性は明白

 

「自ら考えて行動できる人材」(大手繊維メーカー)

「自分で考え行動する個性豊かな人材」(大手保険会社)

「自分で考え、しっかりと行動できる人」(某総合商社)

「指示を待たず、自分から何かを創り出していける。

また、自分を向上させようする意欲と姿勢をもった人材」(大手IT会社)

 

多くの企業が「自分で考えて行動できる人」、つまり、「自律型」の人材を求めている。自発的に自分自身をリードして行く人材だ。

 

自律型の人材が求められる背景は明白だ。あらゆる分野での急激な変化が日常化しているなかで、上からの「指示待ち型」の人材では会社が潰れるからだ。

 

 

階層型官僚組織では環境変化についていけない

そもそも、上から、タイムリーに適切な指示を必ずしも出せる時代ではない。大事な情報は組織の末端にある。変化を直に感じとれるのは現場だ。

 

現場の生の情報は、縦割りの何重もの官僚的階層によって遮断されてしまうため、トップには伝わり辛い。とくに悪い情報はそうだ。伝わった時点ではすでに時遅しだ。

 

確かに、中には現場を回って自ら生の情報を得るトップもいる。

 

だが、そういうトップがタイムリーな意思決定を下したとしても、ピラミッド型組織を経て、今度はフロントアクションを起こすまで時間がかかる。そもそも、トップだけでは限界がある。

 

規格大量生産に合致した、階層型官僚的な縦割りの指示命令型の組織と、そこで求められた、指示待ち実行型の人材では、環境の劇的変化に適応できないのだ。適応できなければ淘汰される。

 

今そして今後増々、自分で考えて行動するイニシアチブをとれる自律型人材のニーズが求められるだろう。企業が彼らを求めるのは良く理解できる。

 

 

しかし、自律型人材は希少資源

しかし、その求められる自律型人材が世の中にどれだけいるのだろうか?「新卒に占める自律型人材の割合」などという調査があるかどうか分からないが、けして多くはないだろう。

 

大学もまだ規格大量生産型社会に適した「指示待ち型」人材を輩出している様に見える。

 

事実、研修の場での印象としては、自分で考える前に、すぐに「正解」を知りたがる若手の人材が増えている感じである。

 

今後増々、少ない自律型人材獲得の企業間競争は激化するだろう。結果、採用コストも上昇する。

 

 

自律型人材を獲得した後が大切

さらに、仮に、自律型の人材を獲得できてもその後が問題となる。

 

会社の風土が自律性と相性が悪いと、その人材の能力は発揮されない。古いタイプの上司や先輩が、意識、無意識的に自己防衛の為に足を引っ張ることも考えられる。

 

上からの指示を待ち、それを忠実に間違いなく実行することをよしとする従来型の人材は、自律型の人材を骨抜きにしてしまうかもしれない。

 

そうなると、入社時点では、自律型であった人材も、指示待ち型に後退してしまうだろう。でなければ、転職したり、起業したりするのではないだろうか。

 

そもそも、なぜ自律型の人材を企業が欲しがるかといえば、そういう人材が不足しているからだろう。ということは、自律型の人材を育成できるような企業風土や仕組みもないのだろうと推測せざるを得ない。

 

どんな人材でも、「自律型」に育てられるという企業は稀のようだ。その逆が得意な企業は多くあるように思えるが。。。

 

 

より根本的な課題は、従来型人材の再教育

せっかく採用した自律型人材をどう活かすかがも課題だが、それ以上に、従来型の人材をどう教育し直すかがより深刻だ。

 

近年この分野は、コンピテンシーを重視する評価や研修という形で進められて来た。望まれる行動特性を特定した上で、訓練するやり方だ。

 

例えば、今後は、「自ら率先して業務の改善に当たってもらう」べく、指示待ち型人材のAさんに、問題解決研修を受けてもらうやり方だ。

 

ほかにも、「部下のイニシアチブを高めるために、部下の意見を傾聴する中で、答えを引出す」というコンピテンシーを植え付けるべく、指示命令型のB上司に、コーチングの研修を受けてもらうのも同じだ。

 

  

古い思考・感情バリアが行動変容を阻害する

だが、このやり方の限界が今や認識されつつある。訓練しても思ったほど行動が変わらないのだ。

 

新しい行動を、知識として理解したり、ロールプレーしたりして学習はしたものの、実施できなかったり、長続きしなかったりするのだ。つまるところ、行動特性を学んでも必ずしも定着しないのだ。

 

その最大の原因は、慣れ親しんだ行動の変革を阻む思考と感情のバリアを取り除いていないからだ。古い思考・感情バリア(マインドセット)が働き続ける限り、新しい行動は阻害されてしまうのだ。

 

例えば、先の、自ら率先して業務の改善に当たってもらうべく、指示待ち型人材のAさんに、問題解決やシックスシグマ研修を受けてもらったとしよう。本人も前向きに、自分を変えようと、プロセスを学び、ケーススタディーに参加する。

 

実務に戻り、早速実践してみよう思う。色々と考えるなかで、本当に慣れ親しんだやり方を変えて良いのかと心配になる。上司の承認を受けずに勝手にやるのも不安だ。もし自発的に行動して失敗したら責められるのではないかと心配になる。

 

やはり、事前に上の承認を取ろうとする。そうすると、上もやり方を変えるのは不安なので、「今、実害があるのか?」、「本当にそれが必要なのか」、「裏目に出たら責任を誰が取るのだ」と迫ってくる。不安は増々つのり、提案を取り下げる。結局、なにも変わらない。元の木阿弥だ。

 

 

自律型人材育成の焦点は、思考・感情バリア撤去

Aさんが学んだ新たなスキルを実行し、かつ定着できる為には、Aさんの思考・感情バリアを取り払う事が肝心なのだ。そこをセットで学んでもらわない限り、何度研修を受けてみても無駄なのだ。

 

このパターンは、何も問題解決研修に限ったはなしではない。コンピテンシーを含むありとあらゆる新しいスキル習得に共通する課題だ。

 

行動変容を阻害する、思考・感情バリアを取り払えば、新しい行動を定着させ易くなるのだ。それを怠ると研修が無駄になってしまう。

 

自律型人材の具体的なコンピテンシーが特定されているのであれば、行動変容を阻害している「思考・感情バリア」をいかに取り除いていくかが自律的人材育成と組織強化の焦点になっていくであろう。