グローバル人材とメンタル・タフネス


グローバル人材と精神タフネス

 

by 高杉尚孝(たかすぎひさたか)

お問い合わせはこちらからどうぞ

 

 


グローバル人材のスペックは多様

多くの日系企業で、グローバル人材の育成が優先順位の高い課題となっている。

 

ただ、その具体的なスペックとなると、企業の置かれている立場によって大きく異なる。

 

その中で、基盤となるのが、重圧状況においても平常心を保つ能力である「メンタル・タフネス」であろう。


 

省庁が独自の定義を打ち出している

グローバル人材の概念に含まれる要素として、経済産業省の整理がよく引用される。


Ⅰ:語学力・コミュニケーション能力  

Ⅱ:主体性・積極性、チャレンジ精神、協調性・柔軟性、責任感・使命感 

Ⅲ:異文化に対する理解と日本人としてのアイデンティティー

グローバル人材育成推進会議中間まとめ」から(2011年6月)


他に、文部科学省版もある。

こちらには、教養や社会貢献なども含まれている。


日本人としてのアイデンティティーを持ちながら、広い視野に立って培われる教養と専門性、異なる言語、文化、価値を乗り越えて関係を構築するためのコミュニケーション能力と協調性、新しい価値を創造する能力、次世代までも視野に入れた社会貢献の意識などを持った人間

産学官によるグローバル人材育成のための戦略」から(2011年4月)


上記どちらの定義も的を射ている。

確かに、これらの能力はどれも大切だ。


特に、コミュニケーション能力はグローバル、ドメスティックを問わずリーダーに求められる大切な能力だ。日本人としてのアイデンティティーを含んでいるところも官製的といえるかもしれない。


 

厚生労働省版の特徴は「タフネスさ」

実は、厚生労働省もグローバル人材像に言及している。


未知の世界、時に非常に厳しい環境に、『面白そうだ』『やってみたい』という気持ちで、積極的に飛び込んでいく前向きな気持ち、姿勢・行動力を持っていること。そして、入社後に一皮、二皮剥けるため、『最後までやり抜く』『タフネスさ』があること。しっかりと自分の頭で考え、課題を解決しようとすること

第9回雇用政策研究会資料」(2012年7月23日)


こちらは、異文化理解や日本人としてのアイデンティティーへの言及がないぶん、どこがグローバルなのかとの印象もある。


いずれにせよ、この厚生労働省版も、他省版と同様に「積極性」を挙げている。さらに、他省版には明確に示されていない「問題解決能力」も挙げている。確かに、これも重要な能力だ。


もう一点、厚生労働省版で特に示唆的であるのが、

最後までやり抜く」「タフネスさ

という精神面での能力を挙げている点だ。


実は、この「最後までやり抜こうとするタフネスさ」が特にグローバルリーダーとしてとても重要である点を強調したい。


 

経験的にもメンタル・タフネスは大切

コンシューマー向けを含む精密機器で世界的に有名なブランドを持つ日系グローバル企業がある。


この企業が2012年に実施した、「海外業務遂行上必要なスキル」に関する社内アンケート調査では、回答者の67%が「タフネス」を必要不可欠なスキルとして挙げている。


これは、第一位の「コミュニケーション能力」(82%)(語学力ではない)に続く、第二位の「異文化理解」(68%)とほぼ同じだ。


経営コンサルティングやインベストメントバンク業務など、いわゆるハイプレッシャー業務を通しての個人的な経験としても、難しい環境下で粘り強く業務を進めるために、精神的なタフネスは欠かせないと感じる。


どんなに、「優秀」なリーダーであろうとも、メンタル面での粘り強さにかけると、持てる力を充分に発揮できなくなるのだ。


 

メンタル・タフネスはグローバル業務遂行上の

プラットフォーム

社会人ビジネススクールで教鞭をとる傍ら、多くのグローバルリーダーと接する機会がある。先達て、4年に亘る東南アジアへの赴任から帰国した日本人マネージャーとの会話の中で、グローバル業務を通じて何を得たかとたずねた。


氏曰く、

「精神的にタフになれたことでしょうかね」と。


確かに、グローバル業務は、結果としてメンタル・タフネスの強化につながる。


ただ、リーダー育成上大切なのは、メンタル・タフネスの強化を、単にグローバル業務を通して得られた「結果」として捉えるだけでなく、そもそも業務遂行上グローバルリーダーに「不可欠な資質」、いわば、プラットフォームであると理解する視点であろう。


メンタル・タフネス強化を、グローバルリーダー育成の中心的な課題のひとつとして位置づけるとよいだろう。


 

kisobi.jp上の関連記事はこちらへ