
「ダブルループ学習」(Double-Loop Learning 以下DL学習)は、人材育成を考える上で欠かせない概念である。

「ダブルループ学習」を理解する
「ダブルループ学習」(Double-Loop Learning 以下DL学習)は、人材育成を考える上で欠かせない概念である。
米国の組織心理学者故クリス・アージリスが、著書『組織学習』(Organizational Learning)において70年代に提唱した学習理論だ。
「ダブルループ学習」を理解する際、その対比概念である彼らの言う「シングルループ学習」(Single-Loop Learning 以下SL学習)をまず理解しておこう。
アージリスは、サーモスタットを用いた比喩で説明する。
SL学習は限定的な学習
SL学習型「サーモスタット」は、所与の設定温度度を保つためヒーターを調節する能力を持つ。
つまり、「与えられた」手段であるヒータの入り切りによって、「与えられた」目標である一定の温度の維持を達成するのだ。
SL学習は、所与の前提範囲内での試行錯誤の学習である。
与えられた思考と行動の枠組みの中で問題解決は図る過程での学習を指す。
故に、そこでの学習は、ヒーター入り切りのタイミングの理解に留まる。
DL学習はより深い学習
変わって、DL学習型の「サーモスタット」は、前提の設定温度の妥当性を検証する。
また、そもそもなぜその温度にしたいのかと、目的も検証の対象とする。
さらに、手段の妥当性も検証する。
「ヒーター以外にも温度調整の仕方はないのか。例えば、カーテンの開け閉めなどはどうか」と。
この様に、所与の前提をも検証の対象とする、より深い問題解決のプロセスから得られる学習がDL学習である。
問題解決プロセスと学習を分けるとよい
「ダブルループ学習」と「シングルループ学習」の概念を理解する上で役立つ発想として、「問題解決のプロセス」とそこからの「学習」を分けて捉えることをお勧めする。
つまり、まずは「SL型」と「DL型」の問題解決プロセスがあると捉える。
「SL型」問題解決プロセスは、所与の前提範囲での問題解決法であり、他方「DL型」問題解決法は、所与の枠組みを超えた問題解決法であると捉える。
そして、各々のプロセスから得られる「学習タイプ」を、「SL型」学習と「DL型」学習とに整理するのである。
この様に整理するこにより、問題解決のプロセス自体と、そこから得られる学習とを混同せずに理解しやすくなる。
DL学習は世界観の転換を伴う難しい作業
グローバル競争時代において、求められるのは、DL型の問題解決であり、またそこでのDL型の学習である。
そしてそれは、自分が必ずしも意識できていない価値観、評価基準、行動原理などを浮き彫りにした上で、さらにはそれらを変えるという作業を伴う。
言わば、己の世界観(パラダイム)を転換する難しい作業である。