グローバル人材育成の焦点

グローバル人材が結果を出す上で、最も重要な因子が特定された。

 


グローバル人材の育成が優先順位の高い課題となっている。その方法として、若い内に海外業務を経験させる試みを進めている企業が増えている。例えば、多くの総合商社は、20代のうちに新興国を中心に海外経験をほぼ義務づける制度を導入している。 確かに、原体験を得る場としては適している。

http://www.disc.co.jp/uploads/2012/03/2012.2.22_global.pdf

 

同時に、その経験を最大限に活用しようとするのであれば、そこでどのような学習を期待するのか、身につけて欲しいコンピテンシーは何かを、本人も経営側もしっかりと意識した上で、送り出すことが重要だ。「取りあえず行って、な何でもよいから学んで来なさい」では困る。期待されるそのコンピテンシーを特定した上で、またその習得を本人任せにするのではなく、経営側も積極的に支援したほうがよいであろう。

 

それでは、そもそもグローバル人材に求められる数有るコンピテンシー(因子)のなかでどこに焦点をあてたらよいのであろうか。結論からいうと、それは目標に向かって揺るぎなく専念するタフネスの向上である。

 

 

最重要コンピテンシーは、やり抜く「タフネス」

 

私もメンバーである筑波大学国際経営プロフェッショナル専攻グローバル人材開発リサーチユニット(代表永井裕久教授)は、近年「12ヶ国グローバルリーダー調査」を進めて来た。

 

その内容は、約907名の多国籍グローバルマネージャーを対象とした、グローバル業務遂行上影響を及ぼすコンピテンシー55項目の統計学的な因子分析である。

その最終報告が、永井裕久/キャロライン・ベントン編著「パーフォーマンスを生み出すグローバルリダーの育成」(白桃書房)として20153月に発表されるに至った。15章中、私も3つの章を執筆している。

 

実は、この研究において最も重要として特定されたコンピテンシーが、

1)【目標に向かって揺るぎなく専念する】(タフネス)、である。

 

それに続く主要因子は、

2)【アイデアを実行に移すことで変化に取り組む】(行動力)

3)【公式・非公式のコミュニケーションを取る】(伝達力)

4)【相手を読んで、交渉スタイルを調整する】(交渉力)

との結果となっている。

他に、コピピテンシーではないが、重要因子として

5)【異文化に対する理解度】も特定された。

 

内容としては、別段大きな驚きをもたらすものではないだろう。しかし、重要なポイントは、これらが多様な国籍の907名のグローパルリーダーのアンケート調査を、定量的に解析した上での結果である点だ。

具体的には、調査チームのメンバーである椿広計氏、統計数理研究所副所長(前筑波大学院教授)を中心とした、rpart関数分析の結果である。

 

 

経験的にも納得できる結果

 

定量的に特定されたこれらの因子はどれをとってみても、多くの読者の経験的に納得できる内容であのではないだろうか。そもそも、グローバルリーダーがいかに優秀であっても、「目標に向けて揺るぎなく専念する」タフネスを持ち合わせていなければ、よい結果につながりにくいであろう。簡単にあきらめてしまってはこまる。タフネスは、グローバルリーダーに求められる基盤となるコンピテンシーだ。

 

また、目標達成に向けて、何に粘り強く専念するのかといえば、まずは「アイデアを実行に移すことで変化に取り組む」作業にである、というのも納得できる。当り前だが、どんなに素晴らしいアイデアでも、実行されなければ目標達成にはつながらない。とりわけ、行動力は、粘り強さと直結している。単発的なアクションでは結果につながりにくい。

 

同時に、アイデアを実行する際、必ずといっていいほど周りを巻き込む運びとなる。「全てを自分で」という分けにはいかない。従って、行動力に加え、周囲と「公式・非公式のコミュニケーションを取る」伝達力が求められる。

 

そのコミュニケーションにおいて期待されるのは、同じ目標に向けての周囲の積極的な行動であろう。それも、出来る限り自発的に動いてくれるのが望ましい。それには「相手を読んで、交渉スタイルを調整する」柔軟的な交渉力が重要になるのもよく分かる。

 

行動力、伝達力、交渉力。どれも、最後まで粘り強くやり抜くタフネスが基盤となる。

 

そして、これらのコンピテンシーの効果は、グローバル業務環境に対する理解の度合いに大きく影響されるであろう。従って、「異文化に対する理解度」の重要性ももっともである。異文化という環境をしっかりと理解していなければ、第一に、実行の対象となるよいアイデアを出すのも困難であろう。

 

 

フォーカスすべきは、異文化理解とタフネス

 

つまり、「12ヶ国グローバルリーダー調査」の最も重要な意義のひとつは、数有るグローバルリーダーの成功要因の中で、どこにフォーカスを定めれば最も効果的であるかを統計学的に示してくれた点にある。

 

もしグローバル人材の育成の一環として、海外業務を経験させるのであれば、「異文化理解とタフネスが要」である点を本調査は示してくれたのである。その上で、行動力、伝達力、交渉力に磨きをかけるとよいわけだ。

 

 

課題は、次のステージ「How」へ

 

「何を」集中的に強化すると良いのかが分かれば、次の課題は「いかに」強化するかとなる。課題は次の段階である「How」へと進む。とりわけ、「タフネス」の強化は悩ましいと感じておられる読者も多いの

ではないだろうか。

 

「持って生まれた資質」として捉えれば、開発するという発想は薄れる。入社段階で見極める努力をするものの、決定的な手法はない。 社員の中に、精神的に「タフ」な人材が多くいれ良いが、そうとも限らない。結局、最終的には「いくつもの修羅場を経験するしかない」と考えてしまいたくなる。しかし、これもリスキーだ。少しでも、会社として、学習をたすける支援が望まれる。

 

2001年以来実施している、「タフネス思考強化」は、認知行動心理学とハイプレッシャー業務経験に根ざした、当事務所が自信を持ってお薦めできる企業向け研修プログラムだ。思考を管理することで、粘り強く業務を遂行できるスキルを身につけることができるユニークな研修だ。グローバル人材育成の一環として、大手企業に好評だ。勿論、国内業務に従事するリーダーにとっても有効だ。興味のある経営陣、人材育成担当の皆さんからの問い合わせをお待ちしている。

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